静かに伸び縮みするそのねばっこい赤い紐が、ボクとBをつないでいる。
ボクはあまりにBが嫌いだ。
あの小さな凶器、音速で振動する大きな羽音、長い足、黒と黄の息づかい、目、触角。
そしてその針。毒牙。
正面から来るときは、Bはいつだってボクの顔めがけてやってくる。
後ろを舞うときは、いつもボクのクビもと鎖骨その付け根に、着地しようとする。
ボクはいつも思う。
Bはボクを刺すに違いない。
着地の瞬間、Bの最後尾にのびるB自身の鋭敏な痛みが、ボクの首を貫くだろう。
ボクはいつだってBが恐い。
いつもそこにいるBが恐い。
Bの羽音を、ボクはいつだって聞いてしまう。
大きくだったり、かすかにだったり。
Bはいつも、ボクの耳に触れる。
でもボクはBに刺されたことはない。
Bはどこにいるのか。
いや、確かにいる。
ボクは見ている。
Bが見える。
Bはいる。
聞こえる。
ただBは刺さない。
ボクはBの着地を感じる。
ボクの体にBはその足をつける。
最後の距離、Bの殺意、Bの危険、Bのボクの生死。
Bのそれを、ボクは一度も経験しない。
Bの針の向こうには、何があるのだろうか。
Bの犯行は、それ以上のドラマを生むのだろうか。
ボクはBが何より恐い。
Bへの恐怖が、ただただボクにBを存在させる。
意識の中にどこまでもBの存在を植えつける。
ボクははじめてここで、その赤い紐。
紐を滴り伝う赤い紅い色の雫を見る。
ボクは、家中のハサミを窓から放り捨てた。
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