ボクが喀血?した黒胆汁を、Mはカップにすくいとって、ハンバーグステーキのソースに使った。
「きっとおいしいだろうさ、コクがあってね」
フライパンでの中で肉汁と赤ワインと煮詰められていく。そのソースは暗い紫の照りが出て、確かに食欲をそそった。
まさにブータンノワール、演出された血と肉の魔術的で蠱惑的な濃厚で豊潤な匂いが、皿から立ち上り、運ばれていくその速度にのってそれぞれのテーブルから店中に広がる。
焼き閉じ込められた食欲は、ナイフとフォークで切り取られ、凝縮された憂鬱のソースとともに、若い女性客や、いたずら盛りの子供たちの口に飲み込まれていく。
ボクの精神は実体としてのメランコリックに形をかえて、液体として気体として空間を、漂い、侵食した。
ディナーに仕込んだ20枚のハンバーグステーキはすべて誰かの胃袋に収まり、彼ら彼女らは家路についたのだろう。
ボクの憂鬱は彼らの中で消化されたのだろうか?
少し残っていたボクのソースを、ボクたちは店を閉めたあと、鴨のローストの切れはしとバゲットにつけて食べた。
まさか
「憂鬱は、かくも甘美に美味なるものかな、だな」
SもFも、同意した。