2011年4月6日水曜日

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道を歩く。
道の向こうから、黄色い犬が歩いてくる。
彼は犬に向かって、犬は彼に向かって、平行線の上を進むように、近づいていく、距離が縮まる。
犬は彼の少し手前で止まり、自分の横を流れていく彼に顔を向ける、犬の顔だけが彼を見ている。
その瞬間だった。
彼の視界は真っ暗に遮られ、暗闇の奥からは生温かい臭気のこもった空気が流れてくる。
犬は彼の頭を飲み込んでしまった。
彼はあごの下にぬるっとしたぶよぶよの唾液を感じ、頭蓋の後ろに牙の軽い圧力と刺激を感じる。
彼はそのまま歩き続ける、そこにある「ある程度の」疑問は保留したまま。
犬によって彼は別の世界に移動させられた。
犬の中は、彼が酒を飲む場所と並行して存在した世界であり、それは同じ場所で別の位相をもって進行していた時間だった。彼はひとつの時間から別の時間へと同じ世界内で移動した。
彼の体、胸や腕や脚はさっきまでの時間の中で通常の視線に晒されているだろう。
そして彼の視界や認識はまだ暗闇の中で、犬の温度の中で動いている。
首にかけられた分断は、だんだんと微妙な心地よさを帯びてくる。
並行して存在する(だろう)分裂じた時間たちを同時に生きること。
彼はいつもそんな夢ばかりを見ている。
彼の犬はそのためにいま逆立ちをして彼の頭に取りついている。
彼によって。    

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