「石だらけだ。やっぱりここは本州とは違う。本州っていうところがどれだけドメドメで閉塞的、かつ自分たちが代表面してるかってことが、そこから来た人間として恥ずかしいくらい、よくわかります」
海岸に、何と形容すればいいか、こちらをぽっかりと困惑させるような佇まいで設置された2メートル大のカボチャのような物体の肌を、撫でたり、そこから離れて、離れたところからそのカボチャと海岸のミスマッチな状況の写真を撮ったりしながら、ダニエル君は話している。
ボクたちはそんな風に島の周りを散歩し、目についたものに寄り道しながら、島の頂上部に向かった。
安藤忠雄とベネッセによって作られた地中美術館には、安藤自身の作品であるその建造物とともに、クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアらの作品が展示されている。
それら少数の作品群によるこの空間に展開された作品世界に、ボクはすっかり倒錯され感動してしまった。
感動だって!
感動する、心動かされる、関心を持ってしまうまたはそれを表に発動させてしまう、そういったことを出来る限り排除しようと努めていたボクはどこにいった!
まさか、まさか
ボク以外のモノ、それも芸術なんて他人事に、ボクが感動させられただって!
そんなことがあり得るなんて、あり得るに決まっているのに、思いもよらなかった、忘れてしまっていた。
目眩がする、動悸がする、涙が出る。
苦しい
考えてもみたら、そうだ、それがボクが活力的になるいつもの理由、お決まりの常套文句じゃなかったか。
「夜は、何があるかわからないから」
「え?」
口をついて出た言葉に、ダニエル君はボクを見た。
「うん、そのままだよ」
「そうか。うん、うん、ボクらのモットーだね、ははは」
・・
直島は、ボクにとっての夜だった
夜の暗さは、この異世界の空気であり
この島の複雑さは、夜の怪奇そのものだ
常にボクを超えていく 夜
ボクを超えてボクに向かってくる 夜
この島はまさしくボクの、ヨルである。
ヨルは楽しく、つらく、素晴らしく
ヨルにはすべてがつまっている
それは昼との表裏として
それは昼の仮面として
ヨルは、ヒルと背中合わせにキスをする。
直島は、ボクの人生にキスをしたのだ。
直島は、ボクのヨルとして
ボクの闇に、融けていった
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