2009年7月5日日曜日

ワタシ語り.5




vichon mediterranean cabernet sauvignon 2007 sieur d'arques


連日のピノ・ノワールの反動で、カベルネ・ソーヴィニヨンが無性に飲みたくなった。と、

そういうわけではない。

ワタシ本来の好みからいけば、タンニンのしっかりしたブドウの凝縮感を感じさせるワインは確かに好きだけれど、それは確かにおいしいけれど、今のワタシにはつまらなくおもえるので、それであえてのピノ、なのだ。もちろんピノは好きだ。

よくわかっていないものに言葉を重ねると、それは重ねるほどに嘘くさくなり、核心から離れて行く。
これは個人的な、コトバの経験、のようなものだけれど、それでも訓練を続けることしか、本質を掴む能力に近づく道はない。
ワインも自意識も、同じだ。

脱線したが、このワインである。


このワインとの縁の一つは、偶然酒屋で見つけたものだけれど、これが今日働いていたフレンチのグラスワインで出されているものだということ。

もう一つの縁は、ワタシの軽薄なワイン経験にそれでも多大な影響を与えているロバート・モンダヴィがフランスのラングドックで作ったレーベルがこの"vichon"だということ。それを酒屋のポップでしった。

正直、外観から、どこか南米のものかしら、などとグラスに幾度と注ぎながら思っていたが、なかなかおもしろいワインだった。


グラスを傾けると、赤紫の濃いエッジが目立つ。それは最近の自分のワイン環境があまりに対照的だからだろう。
深い漆黒のようなガーネット。単一品種の特徴とも言えるあまり差のないグラデーションだが、中心部がそれなりに深く暗いのは、何の影響によるものだろう。ブレンドではないのだろうから、樽熟成によるものか。
粘度はあまり高くないようで、ラルムがきれいに出てこない。温暖でも冷涼でもなく、品種の特性というわけでもない、ということか。

グラスに鼻を近づけると、粉っぽいブルーベリーの香り、ありていに言えばカシスやプラムといったところか。それでもワタシはその中間のブルーベリー、果皮とフレッシュさのちょうど良さ、というニュアンスをプッシュしたい。
オークは何をつかっているのだろうか、ヴァニラの香りが表に目立つ。

グラスから口に少し含む。
甘いタンニン、と酸味に由来するのかというスパイシーな刺激。
甘いタンニンというのは、ヴァニラの香りと凝縮した果実の甘み、と、ざらつきのない滑らかなタンニンの心地よい、渋みというよりはほろ苦さか、というワタシなりの意識、組み合わせだ。
ヴァニラと苦み、まるでそういうタバコのようだ。タバコは吸わないのでその感想は想像の行きを出ないが、甘いモノは好きだから、少しビターなチョコレートのよう、ということは言える。
アルコールが甘みや苦みの広がりをもたせている。喉を落ち、鼻に抜けるときのつんとした刺激が、夜のヴォリュームという実感をくれる。


冷蔵庫にいれて少しだけ冷やすと、タンニンの渋みがより表に出て、のどをするっと通る滑らかさ、喉越しのよさが出た。
ヴァニラの香りはひいて、果実の果皮の感じや果実っぽい甘みのニュアンンスが出てくる。

でもワタシは、タンニンの強いものが冷えたときの味わいの中には、往々にしてどうしてもイカ臭さみたいなものを感じてしまう。あたりめを噛むときのような。嫌いではないが、できれば遠慮したい。楽しいときもあるけれど。


カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴として、ピーマンのような香りと、青い紫、インクのような青みというものがあるのだろうけれど、こういうある種の典型的なカベルネを飲んで、それを意識すると、確かにその言葉の定式は有効だ。
今までそういった言葉はただの知識だったが、意識と対象を結びつけたときに、リアリティーがかなり強い。
なるほど、コレを、ソウ、ソンなフウに言うのか。と。


このワインをwebにかけるなかで、面白い記事を見つけた。

なかなかマニアックだから、興味のあるヒトはじっくり読んでみて。
モンダヴィが死んだ日の記事とかも出てくる。
やっぱり現実に多くのヒトが、彼のworkに射たれたのだな、としみじみとなった。



「カベルネが知性に語りかけるのに対し、ピノ・ノワールは官能に訴える」 ― ジャンシス・ロビンソン

そうなのかもしれない。が、それほどの知性と官能に出会ったことがないから、まだワタシの中では渾然一体だ。


「ワイン、それは瓶に籠められた詩である」 ― ロバート・ルイス・スティーブンソン

真実だ。ワインは、誰のための飲み物でもないが、ワインを飲んで詩人にならない、ワインに詩を求めない、そういうヒトを、ワタシは嫌う。

芸術的なワインは、リッチマンの一夜の狂宴のもとにではなく、すべての芸術を愛するヒトに、願わくばあまねく行き渡らんことを。    

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