雨が降ったあとのような、ひんやりとした夜の空気が涼しい。
I'm singin' in the rain. Just singin' in the rain.
口ずさみながら、ボクは、足で誰かのお腹を蹴るマネをする。
"A Clockwork Orange"
何もない夜空と、自分の生活に、
外国の映画と音楽を重ねて、
ボクは強引に色彩を塗った。
荒々しくペンキをかけられて汚された鮮やかなスカイブルーとオレンジの夜のはじまりは、ボクをどこに連れていってくれるのか。
ボクの義務は果たしたよ。
ボクは今日の始まりを、夜の最初を定義したよ。
あとは夜、そう君の仕事、君の支配する領分だ。
だからボクらは明るい光に集まる蛾のように、夜よ、きみの不思議に吸い寄せられるのだよ。
その明るさの由来が危険な炎だとして、ボクらは自らを炎の中に焼いてしまうのかもしれないが、
夜よ、ボクは君に委ねてしまうよ。
絵の具のチューブを地面にたたきつけて、それを思い切り足で踏んだり蹴っ飛ばしたりして、ボクは投げやりにボクの体を運ぶ先を決めてしまうことぐらいしか出来ないのだから。
無軌道な若者、デカダンス
そんな借り物の衣装しか、ボクは用意できないでいる。
借りて来た衣装、ぶかぶかでぴちぴちのちぐはぐなファッションで、ボクは夜に出かける。
最後は全部脱げてしまって、きっと裸のボクがいて、そうして朝の明るさに失明寸前の気絶を受けても、
夜よ、
ボクは、依るべき居場所が見えないでいるのだよ。
夜よ、夜という君のその存在だけが、ボクのドラマであるのだ。
ドラマの描けないつまらない人間には、君の存在が、あまりに救いなのだ。
夜よ、君のドラマの中でボクを殺してくれないか。
そして、ボクにドラマを書かせてはくれないか。
ボクがドラマを書くことを、君のドラマの中で、その風景を用意してくれないか。
救済のドラマ、ボクの「人間失格」を、ボクは他人に用意されたいのだ。
夜よ。
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