二日続きの街の喧噪が鳴り止み、日常の循環の中に自分の体を戻して、
ボクは、夜の淋しさの訪れを、ひっそりと感じ佇む。
騒ぎ疲れ騒ぎに飽き、それでも騒ぎに恋い憧れ懐かしむボクは、
未消化な昨日を消化しようと、機能不全の内臓を動かすために、バーに入った。
リトル・ビアーの甘さと香りに、鼻と胃がまっすぐに繋がり、その活力を取り戻す。
ゆっくりと、この二週間を味わう。
次に何を体に入れれば、よりよい深夜十二時を始められるだろうと考えていたら、
突然にまた喧噪が、店に入り込んできた。
ボクは、それを嫌がるわけでもなかったが、一つの大きな塊の横では、ボクは、どうしてもその塊を観察してしまい、内省することも難しく、そんなさらなる未消化を消化しようと目をつむるボクを気遣うバーテンダーに悪いとも思え、混みだす前にマティーニを頼み、会計を済ました。
喧噪の始まりの前のおとなしいざわめきの中で、出来上がったマティーニに口をつける。
ボンベイとチンザノの割合がちょうどよく、香り高い冷涼な辛さが舌のふちを濡らす。
シェーカーの中で少し多めにとけた氷の水が、ハーフ・ロックの風味をもたらしている。
飲み終えたグラスにオリーブの種を戻し、ボクはひやかしを詫び、礼を言って店を出た。
酒の香いが、冷たい夜の空気に溶けていく。
どれだけ世界を観察しても、世界は観察されるスケール以上に、大きい。
大き過ぎる世界の前で、ボクは自分を幸福にも見失う。
見失うその速度に酔い、酔いが醒めるまでの酔いに浸る。
次の朝に見えるものは、さっきまでの酔いの振り返りであり、新たに見えた世界と見失った自分との相対化だ。
朝食のフルーツとダージリン、昼食の中華料理の中に、喧噪の裏側、現実のシビアが浮かぶ。
いくつもの驚きを冷静に分解し、世界はまた構成される。
鮮やかすぎる大衆の美しい色彩を、自身のパレットに収める。奪い取る。
マティーニの厳しさが、好きだ。
愛すべきマチズモが、そこにはある気がするから。
「あなたのツメの甘さは、それが目立たないほど、かえって大きな毒よ」
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