「男女の友情って成立しますかね?」
ソファに腰掛けていた秋山は、手元の雑誌に目を落としながらそう言った。
「生物学的には、というのが僕の見解だ。少なくとも女と認識された以上、それは男にとっては交尾の対象だろう」
「それって、矛盾してませんか?」
秋山は雑誌から顔を上げ、いぶかしげな目を向けながら、右の口角を少し上げた。
「確かに。でもやはり矛盾しないね。つまり意識の上で女でないものは、生物学的な問題を除けば性別を持たない存在だ、ということさ」
カワサキはワークチェアに背をもたれて、頭の後ろで手を組んだ。
「何か、悩んでるわけかな。秋山君」
「えぇ、まぁ。でも、女の子の方からそんなこと言われたら、男は答えようがないですよね。知らないけど、今は成立したら困るんだよ、って言うしかないんです」
「君、賢くなったんじゃない。試験が近いからって、勉強し過ぎだよ」
秋山は少しむっとしたが、この先輩にそんなことで腹を立ててもそれは十分無駄なことで、最後は結局彼のユーモアの前に降参するしかないことを分かっていたので、ただお辞儀をするだけで部屋を出ていった。
「やはり、賢くなったんだな」
カワサキは丁寧に閉められたドアを見ながら言った。
デスクの上には、目を通さなければならない二三の書類と名刺が一つ置かれている。
体を起こしてからカワサキは名刺だけを指でつまみ、少し眺めてから足下のゴミ箱に捨てた。
「交尾か。もう少し、いい言葉はないかな」
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