どうせ「はねっかえり」って言われるんなら、跳ね返った隙間で生きてやるさ。
ダニエル君は、2007年の秋の日に、紅葉の色づきが終わり葉がちらちらと落ちていく大学のキャンパスの石畳を歩きながらタバコを吸っている。
「ここはそんな「擦り合わせ」の判断ではないと思います。少なくとも司法解釈を厳密に行おうとするレンキストやスカリアの姿勢は、オコナーやブラックマンのそれとは次元が違いますし、何より純粋です」
「いや、もっと実際はテクニカルに判例の歴史は積み重ねられていくよ。そこでは法の安定性とかの理念はもちろんだが、そんな建前以上に現実を見据えた漸進的な変化が重視される」
「それはでも、それを言っちゃぁおしまいよ、じゃないですか。それを判決文に書くなんて、その時点で彼らの権能の破綻ですよ」
「かといってだ、司法というのは時代を見るし、その調整者としての役割も期待されてきたんだ、古来からずっと。君の司法観は狭義だし、ファンダメンタルすぎる。解釈主義が司法の全てを説明できるわけではないし、かなり不十分なんだ」
ダニエル君はゼミが終わり、3時を迎えたキャンパスのベンチに座りながらまだ不機嫌だ。
すぐに自分のフォーマットに持っていく。それなら最初からディスカッションなんてしなければいいんだ、聞く気がないんなら。
知性は開かれていなければいけない、少なくとも彼は知性の理想的な在り方をそう定義していた。
「どんなやつでも正面からぶっとばせる、切れ味」
二本目のタバコに火をつけて、深く煙を吸い込み遠くにそれを吐き出しながらダニエル君は言った。
「それは気をつけてるつもりなんだ」
いくぶん気持ちが落ち着いてきた。目の前の開けた屋外ではみんなが笑って話している。
「僕の立ち位置は、どこだ」
タバコを足で踏みつけて、ダニエル君は遅いランチを、いや早い夕飯をとりに食堂への階段を降りた。
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