木枠で出来た窓、木枠で出来たブラインドから、夕方の暖かい色の光が漏れ射している。
漏れ射しているというのは、みほちゃんが部屋の灯りをつけずに、やはりその漏れ射した光が部屋全体をぼんやりと包んでいるという状態のために、そう述べられているということだ。
みほちゃんはテーブルにひじをついて、片手で分厚い本をめくっている。
ひじをついてと描かれたが、それは決してつまらないわけではない、ただみほちゃんにはもっと考える、考えてしまう内容があったということだ。
「読書の向こうに、何がある」
読書に広がる空気をみほちゃんはもちろん愛していたが、彼女はその空気とその世界からもっと先の世界を描こうと意欲的だった。
読書は読書で終わらない。本は本を呼び、その先には豊かな現実の実りがある。
彼女はその可能性を認めていたし、虚構といえども真理だと認めていた。
それでもみほちゃんが読書の全てに無関心だったのは、彼女の気分自体が落ち込んでいたからだ。
「私は、すべてに優先するの。すべてが、私に優先するように」
「...かっこわるいなぁ。難しいんだよ」
彼女は電話のコードをくるくるとねじって回している。
電話の向こうには誰もいない。これは彼女が、ただぼんやりとしているときに、ただぼんやりと何の意味もなく、ただぼんやりとする癖だった。
みほちゃんはこんなときにとても紅茶が飲みたくなる。
「地獄のように熱い紅茶...」
ごぼごぼと音を立てて沸騰するお湯を、別のポットに移す。
そうして97度になったお湯を一気に紅茶葉に注ぎ入れ、ポットの中を湯と葉が踊る。
紅いきれいなくすんだ色。
みほちゃんはティーカップに口をつける。
のどが焼けるように熱いと感じたときには、空っぽの胃に紅茶の熱さがじわりと重く広がる。
そんなふうにして自分の身体を感じるみほちゃんはやはり変態なのだが、それくらいの変態さが通常あらゆる人にあることを彼女は冷静に把握している。
「こんなことをいちいち冷徹なマゾヒズムとか書いちゃう人って、やっぱりつまんないね。言いたいだけだもんね。文学さん」
こんなふうに、みほちゃんはすぐに物語を離れてこちら側を見てしまう。
それが彼女の美徳であり、欠点なのだ。
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