2009年3月21日土曜日

factotum.27

しかしよく考えてみれば、マジョリティの社会システムというのは柔軟性に富んでいる。彼らはこちらの人格をことさらに問わず、労働の内容ですべてを評価する。変なバイアスがない。先入観や固定観念にまみれた人たちが、よくもまぁこんなにもフレキシブルな制度を作り上げたものだ。

ダニエル君は、スターバックスでの勤務中、その休憩時間の間にそんな風なことを思いついた。

色調の暗い鼈甲柄のボストンタイプのメガネをかけた彼は、文系学生の模範とも言える風貌だが、彼自身世の中の多くの文系学生と呼ばれる人たちを馬鹿にしていた。

学問は、逃げ道じゃない。

大学院への進学を「入院」と言って、そしてそれを自嘲気味に語りながらもその進路をそれなりの衒いもなく発表できる人種の類いを彼は侮蔑している。

まぁ、そうやって何も選択出来なかった自分を、ダニエル君は彼らよりもっと自分自身を自嘲して虐めるのだけれど。

スターバックスの店内はどこも素敵だ。スターバックスという空間コンセプトが、日本全体に行き届いている。しかもそれが、うるさくない。ドトールはダサイし、他は何だか分からない。スターバックスもうるさいときがある。しかしそれは比較の問題であり統計の問題であるから、結局はスターバックスが一番いい。それも主観の問題だ、議論にならない。

「つまらないなぁ」

休憩が終わり、笑顔で接客をし、ラテを作り、笑顔でそれを出して、彼のシフトは終了した。

コーヒーを飲んでもお腹は空くので、お昼時、彼は近くの食堂に入った。

レバかつ定食、800円なり。

彼の好みからいえば、気軽に入れるビストロで、スズキのグリルに安いグラスの白を2杯というコースがよかっただろう。けれど、スターバックスで働いた後にフレンチを食べる自分を想像して、嫌気がさした。たとえそれが自意識過剰だとしても、そのバランスの身の丈は保ちたいと思う。

そんな気持ちの延長で、彼はご飯をおかわりしたが、店を出て、まったくそんな必要はなかったことを自分のお腹をさすりながらしみじみと痛感する。満腹とそれ以上の過剰を消費したかった、それだけのためにわざわざ食べ過ぎる。ダニエル君は、本当に頭を無駄に使いすぎる青年だった。

「さて、どうしますかな」

自転車にまたがり、少し遠いが図書館に向かう。

大判の建築写真なんかが読みたいか、そんなところだな。

自転車は大通りを抜けて、細かい道をまた抜けていく。5月の風は、精神衛生的にいい。


カワサキは、    

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