「美味しいお酒を、下水道の近くで飲むようなもの」
つまりみほちゃんはそう言いたかったわけだが、それはダニエル君によってすんでのところで違う言葉にすり替えられた。
「下水道の近くで飲むこと自体が、甘美なお酒の境界条件なのかもしれないよ」
こういったやりとりを二人はいつも不満に思いながら、しかし大事なこと、それはそれぞれ自分自身にとって必要な作業、思考運動の過程として、簡単にいえば楽しんでいる。
「デカダンスの価値を妄信、盲信したくないわ」
「そんなスマートに生きてみたいな。親切さの偽善さを、僕は疑ってしまうよ」
「ずるいよ、それ」
二人ともタバコに火をつける。
その銘柄うんぬんは私には分かりかねるけれど、まぁおいしいと思うから吸うんだろう、二人の頭はクリアになりながら、煙の中に視線は惚けている。
全ての価値を遠ざけたい、できれば何もない世界に。
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