2008年11月23日日曜日

コノ、りありずむ。

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今日彼が目を覚ましたときの、彼のケータイの待ち受け画面がそれだった。

適当な時間には六本木に行かなくてはならない、そうはわかっていたが前夜に酒を飲み過ぎた。

カラオケは、よくないなぁ。ぽりぽり

うなじを掻きながら、そしてベッドの上でうっぷしたまま、スチュアート・コニグスバーグはぼんやりした目を開けていた。

シャワーを浴びようかと思って、やめた。それも酒のせいだと言えばその通りだが、時間もなかった。

肋骨が痛い。倒れるように寝ていたせいで体が圧迫されていた。

歯を磨き髪の毛をやり、橙色のポロシャツにデニムをはきPコートを着れば、ふざけた生活の寝起きでも、それなりに見える。

むしょうに腹が減るのでコンビニでサンドウィッチを買い、ホームで食べ、電車に乗った。

酒が、苦しい。

彼はそうして寝起きから1時間を使い、どうにか冷静な自己認識と、記憶との格闘と反省という状況にまで、自分をもってきた。

天気は、快晴。太陽はこんな日に限って、やってくる。

新宿での乗り換えを歩いていると、ケータイが鳴った、いや、正確には鳴っていたケータイに気づき、かけなおした。

「どうした?」

「昨日のメール見た?」

「あー見たね、でも無理、その後酔っぱらったから。何だった?」

「ディズニーランド。その日、空いてる?そっちに行くの」

「その日に限って、特別授業だ」

「そう。わかった。じゃあね」

こんな日に限ってうれしい電話は鳴り、そんな日に限って都合は合わない。こんな、そんなには彼くらいの年になれば少しは慣れてくるのだろう。しかし彼はやはり、彼自身にむしゃくしゃした。

都営大江戸線の天井の低さは、そんな彼でも少し自分に自信が持てるような、そんなつまらない錯覚をさせた。

車両の中で少し離れたところに、もたれ掛かって足を組んでいた白人が、かっこよかった。

あとの話は簡単だ。

六本木に着き、イベントに顔を出し、部外者を演じ、また腹が減る。

建物の地下にはいろいろな食べ物屋があって、彼は蕎麦が食べたかった。

「蕎麦ダイニング ○○」という小洒落た店に入った。

こういう蕎麦屋は、こういうところのイタリアンよりも、虚しい。

ビールが半額だというから、彼はビールを頼み、ビールが来、口をつけ、女優の書いたエッセイを少し読んでいる間に、蕎麦が来た。

大根おろしが、胃に優しく、添えてあったスダチを絞れば、これが旨かった。

東京タワー、けやき坂。何もかもが光に包まれ、みんなが思い思いのカメラで、自分たちを取っていた。

彼はあらゆる人に目を配り、あらゆるものを観察し、捉えた。

広がる世界の全てを、スチュアート・コニグスバーグは自分自身に結びつけてしまっていた。今の彼にはそれは、もうどうしようもなかった。

逃げるように、彼は本屋に入った。

本を買い、コーヒーを飲み、本を読む。

そしてまた、電話が鳴った。

予定の中にもなかった予定は、そのまますっかりなくなった。

彼は外に出て、鞄からiPodを取り出した。

iPodを聞くときは、歩くときである。

彼はずいぶんと早足で、たくさんのものを通り過ぎた。

それが今日の彼が選んだ、今日の世界との向き合い方だった。

六本木、乃木坂、外苑通り、赤坂、青山、表参道。

自分をドラマの中心に持ってきたかったかどうか、それは彼自身にもわからなかったが、今日自分が初めて行った意味のある行動だと、彼がそう感じたことは事実だった。

また本屋に入り、チャールズ・ブコウスキーを買った。

表参道駅の改札の中にある紀伊国屋で、おにぎりと、缶のシャンパンを買った。

彼はそれを電車を待つホームで腹にいれたが、ふと、苦笑してしまった。

「よく食うな。しかも2回も、ホームで」

電車が止まり、遅れ、家に着いたのは10時だった。

帰りに買った総菜を食べ、それから先は何も考えることもなくウイスキーを口に入れながら、時間を過ごし、夜を過ごす。

彼がパソコンに向かい、こんな文章を書いたとしても、今日という一日を考えればそれは無理もない話だった。

これまで流れていった今日と、これから流れていくだろう今日を思うと彼は、また苦笑いした。    

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