2007年6月23日土曜日

2006年の、ラブレター。(ある小説の抜粋)

お元気ですか?

僕は元気です。

つまらないことを言いました。ごめんなさい。

今僕は、東京に戻るバスの中です。みんな疲れているみたいで、僕もだんだん、うつらうつらしてきました。

昨夜は本当にどうもありがとう。(これをあなたが読むころにはもう少し時間が経っていますね)

でも、いささかお酒を飲み過ぎました。

楽しい夜でした。


少し肌寒い夜でしたね。

あなたは、「春はもう少し暖かいのに」とつぶやきました。

それでも桜は、本当に綺麗で、

夜の青さはそのピンクとともに、それは幻想的な情景を開いていました。

あの森(本当は公園といった方が近い場所なのかもしれません。でもあれは、森でしょう?)の街頭の光がまぶしすぎたのを、僕は今でも目の前に感じます。


自転車に乗ってそこに着いたあと、僕たちは散歩をしました。

砂利がいっぱいに敷き詰まったその道は、

何だか果てがなくて、

少しお酒の入った二人は、すっかり立ち止まって、惚けてしまいましたね。

そのとき僕は、あなたにキスをしたのでした。

それは、とても、私の中ではロマンチックであって、

自分が何かおとぎ話の世界にいるかのように、ほのかなストーリーの一編であるかのように、

自分をはなれた不思議な視点で、それを見ていました。


幾年も経た恋心は、まったく、私にはわからないものになるのですね。

僕は、自分の人生の中で、あの時ほどの「時間の美しい帰着」を体験したことはありません。

丁寧に重ねられた時間が、本当に一瞬の最後、それは桜のようにはかなかったのですが、実に綺麗にその花弁を開かせて、散ったのです。

その後の数時間は、とても甘美で、僕はもう眠ってしまいそうだった。



そんな言葉を、あのときから僕は心の中にしまい込んで、慎重に丁寧に繰り返してきました。

不誠実な文章です。

本当は、書き尽くせていないものを、集中力の途切れたものを、披露するべきではないのかもしれない。

そんな僕の不真面目を、あなたは笑ってくれますか?    

0 件のコメント: